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福岡地方裁判所 昭和59年(わ)212号 判決 1984年3月29日

裁判所書記官

吉武正

国籍

韓国(慶尚南道晋州市)

住居

北九州市戸畑区菅原一丁目七番一九号

パチンコ店経営

金光三こと

金三

西暦一九一二年一月九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官當山孝保出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡県北九州市戸畑区浅生二丁目九番一八号ほか四か所において「ニューひかり会館」等の名称でパチンコ店を経営するものであるが、自己の所得税を免れようと企て、パチンコ等の売上の一部を除外して簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五五年分の実際所得金額が七六、一九四、八一一円あったのにかかわらず、昭和五六年三月一〇日、同市八幡東区西本町四丁目一四番一六号所在の所轄八幡税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の所得金額が一八、七六八、四九二円でこれに対する所得税額が六、二四六、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四二、二〇七、五〇〇円と右申告税額との差額三五、九六一、四〇〇円を免れ

第二  昭和五六年分の実際所得金額が六二、七四九、四九八円あったのにかかわらず、昭和五七年三月九日、前記八幡税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の所得金額が二一、六二四、〇一三円でこれに対する所得税額が七、八八一、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三二、二九五、七〇〇円と右申告税額との差額二四、四一四、四〇〇円を免れ

第三  昭和五七年分の実際所得金額が二八二、〇〇二、四八七円あったのにかかわらず、昭和五八年三月五日、前記八幡税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の所得金額が五七、〇一四、二九七円で、これに対する所得税額が二九、四九九、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一九六、七七四、一〇〇円と右申告税額との差額一六七、二七四、六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検四三、四四号)

一  福岡国税局収税官吏大蔵事務官に対する供述調書一六通(検二七、二八号、三〇ないし四三号)

一  福岡国税局収税官吏大蔵事務官前田稔作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(検五号)

一  村田辰男(検一三号)及び竹村美津子(一六号)の検察官に対する各供述調書

一  村田辰男(七通、検六ないし一二号)、竹村美津子(二通、検一四、一五号)、頴川加代子(二通、検一七、一八号)、小田恵美子(検一九、二〇号)及び藤本ツル子(検二一号)の福岡国税局収税官吏大蔵事務官に対する各供述調書

一  被告人、村田辰男及び中島三千昭作成の「昭和五五年分から昭和五七年分までの各事業所に係る公表の損益計算書(合計)及び貸借対照表(各期末合計)について」「上申書」と題する書面(検二二号)

判示第一の事実について

一  福岡国税局収税官吏前田稔作成の「脱税額計算書(昭和五五年分)」と題する書面(検二号)

一  押収してある所得税確定申告書(昭和五五年度分)一綴(昭和五九年押第七七号の一)

判示第二の事実について

一  福岡国税局収税官吏前田稔作成の「脱税額計算書(昭和五六年分)」と題する書面(検三号)

一  押収してある所得税確定申告書(昭和五六年度分)一綴(昭和五九年押第七七号の二)

判示第三の事実について

一  福岡国税局収税官吏前田稔作成の「脱税額計算書(昭和五七年分)と題する書面(検四号)

一  押収してある所得税確定申告書(昭和五七年度分)一綴(昭和五九年押第七七号の三)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は行為時においては昭和五六年法律第五四条による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の同法二三八条一項に該当するが、右は犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二、第三の各所為は右改正後の所得税法二三八条一項にそれぞれ該当するところ、その免れた所得税の額がいずれも五〇〇万円を越えるので、情状により同条二項を適用し、各所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯状の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 早舩嘉一)

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